主な乳腺疾患
主な乳腺疾患

乳がんは、乳腺の組織にできる悪性腫瘍で、代表的な症状として乳房のしこりがあげられます。そのほかにも、乳頭からの異常分泌、皮膚のくぼみやただれ、赤みや腫れ、左右の乳房のサイズの違いなどが見られることがあります。40代後半に発症のピークを迎えるとされていますが、20〜30代の若年層にも一定数の発症例があり、注意が必要です。
治療法としては、がんの大きさや広がり、性質、進行度に応じて、手術(乳房温存手術または乳房全摘術)、化学療法(抗がん剤)、分子標的治療(HER2陽性の場合)、ホルモン療法(ホルモン受容体陽性の場合)、放射線療法などが組み合わされて実施されます。近年では術前に抗がん剤を用いてがんを縮小させ、乳房温存手術を可能にする「術前化学療法」も行われるようになっています。また、術後の再発予防を目的としたホルモン療法や放射線療法も重要な治療選択肢のひとつです。
30〜40代の女性に多く見られる乳腺症は、ホルモンバランスの変動により乳腺組織が過敏に反応することで、乳房にしこりのような硬結や痛みが出現する良性の疾患です。特に生理前になると女性ホルモンの影響で乳房が張ったり、鈍い痛みを感じたりすることが多く、症状は月経が始まると自然に軽快する傾向があります。こうした周期性のある乳房の違和感は乳腺症の特徴ですが、乳がんとの鑑別が難しいこともあるため、自己判断せずに画像検査(マンモグラフィや超音波)などによる専門的な評価を受けることが大切です。通常は経過観察が基本ですが、痛みが強い場合は消炎鎮痛剤の使用や生活習慣の見直しを行うこともあります。
乳腺嚢胞は、乳腺の中の分泌液が乳管にたまることで形成される液体の入った袋状の構造で、単発もしくは複数存在します。一般的には閉経後にホルモンの分泌が低下することで自然に縮小・消失する傾向にあり、良性と診断されることがほとんどです。ただし、嚢胞の中に不整な内部構造が見られる場合や、嚢胞に混在する固形部分が確認されるケースでは、乳がんとの鑑別が必要となるため、細胞診や針生検による詳細な評価が推奨されます。サイズの増減が見られることもあるため、一定期間ごとの経過観察も重要です。
乳腺線維腺腫は、10代後半から40歳代までの若い女性に多く見られる良性腫瘍で、乳房にしこりとして自覚されることが多く、触れると可動があることが特徴です。画像検査や針生検で良性と診断された場合は、定期的な経過観察で対応可能ですが、しこりが3cmを超えると今後の増大や審美的な問題を考慮して、手術による摘出が選択されることもあります。
葉状腫瘍は比較的まれにみられる乳腺腫瘍で、組織学的には良性・境界型・悪性に分類されます。良性であっても局所再発を繰り返すことがあり、特に境界型や悪性の場合には切除範囲の確保や術後の経過観察が重要です。しこりが急速に増大するなどの特徴を示すことがあり、診断確定のためには針生検などによる病理検査が必要となります。治療の基本は外科的切除であり、手術による摘出が推奨されます。
乳頭からの分泌物(透明、薄黄色、あるいは血液が混じるなど)で気づかれることが多い良性の腫瘍です。特に血性分泌がみられる場合は注意が必要で、画像検査では非浸潤性乳管がんとの区別が難しいケースもあります。診断には超音波検査やマンモグラフィに加え、針生検などの病理診断が不可欠です。基本的には経過観察となることが多いですが、悪性の可能性が否定できない場合や症状が持続する場合には、腫瘍の摘出手術を検討します。
授乳期に多くみられる乳腺炎は、乳管に母乳がたまって流れが悪くなる「うっ滞」や、細菌が乳頭から侵入することによって、乳腺組織に炎症が生じる病気です。主な症状としては、乳房の一部にかたく痛みのあるしこりができたり、皮膚が赤く腫れて熱を帯びたりします。進行すると発熱、寒気、関節痛などの全身症状を伴うこともあり、細菌感染が強くなると膿がたまる「化膿性乳腺炎」へと進展することがあります。この場合は抗生物質による治療に加え、局所の切開やドレナージ(膿の排出処置)を行うこともあります。授乳方法の見直しや乳房マッサージによる乳汁の排出も、再発予防には重要です。
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